会社の同僚に森本という男がいた。森本は1つ先輩のスッとした顔立ちの男前だ。クールな雰囲気だが、意外と砕けた性格で、そういった点も含め非常にモテそうだ。
以前、出張先から帰社する電車で森本と偶然会ったことがあった。そして他愛もない世間話をする中で、自炊の話になった。
森本は効率やコスパを気にするタイプで、とにかく大量の豚汁を一度に作り、それをひたすら食べ続けているそうだ。安上がりで作るのが簡単、さらに栄養バランスも文句なしという豚汁が、究極の自炊料理だと語った。
究極かは知らないが、確かに私も豚汁は大好きなのでよく作る。そこから豚汁の話が続いた。
「一回鶏肉で作ってみたんだけど、あんまり美味しくなかったんだよなー。ちょっと高いけど、豚バラがベストだったよ」
しばらく豚汁の会話をする中、森本がこんな発見を報告をしてきた。それならばと私も自身の発見、豚汁うどん現象について話をした。
「へー。でも俺はうどん入れて食ったことないや」
森本は予想外の反応を示した。
正直驚いた。大量の豚汁を作る森本のことだ。豚汁にうどんを入れるくらいのアレンジは、当然しているはずだろうと私は踏んでいたのだ。
「俺はとにかく出来るだけ大量に作りたいからさ、鍋パンパンに具材入れちゃうんだよ。そうすると汁っけとか全然なくなっちゃうんだけど、全然それで良いんだよなー」
森本は続けて言う。
「もはや俺は具材を食べるために、豚汁を作ってるからね」
まさか本当に、豚汁つゆ少な目人間に会うとは思わなかった。