暇のパラメータ

暇なので書いてます。

ルームランプ

極めてずぼらな性格のため、しょっちゅう電気を消し忘れてしまう。

特に今の家に引っ越してからは顕著で、2回に1回はトイレの電気をつけっぱなしにしている。前の家ではさすがにここまで酷くはなかった。これは今の家がトイレから洗面所に向かう動線にスイッチがないからだと推測している。用を足して一直線に洗面所に行くと、どうしても電気を消せないという仕組みなのだ。

そう。私は非常にずぼらな性格ではあるが、トイレの後に必ず手を洗う。そして洗面所の電気も消し忘れる。

この前なんか、家に帰るとリビング・キッチン・トイレ・洗面所が全点灯のままだった。思わずビンゴとつぶやいてしまった。

 

勿論、私もいい大人なので、節電の大切さなど重々承知だ。しかしどうにもダメなのだ。車の室内灯だったら、つけっぱなしだとバッテリーが上がってしまうため、緊張感をもって確認する。だが家の電気だと気が緩んでしまう。つけっぱなしでの無駄な電気代というペナルティがあまりに軽い。

 

スマホのデータ容量みたいに、上限を決めてくれたら節電しようとするのだろうか。

 

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ある日。仕事を終えて、駅から歩いて帰る。JRの線路沿いに私の住むアパートはある。本当に線路の真横なので、当然電車の走行音がガンガン聞こえるのだが、私は全く気にならない。これは持ち前のルーズさが良いように発揮された例だろう。

 

到着。その日は何故か、オートロックの正面玄関を回避して、駐車場の方の裏口から回り込むルートを選択した。若干遠回りになるのだが、なんとなく。私にはそういう理由のない無駄な行動が多い。

駐車場をぼんやり眺めながら歩くと、白のフリードの室内灯がつけっぱなしになっているのを発見した。よく子どもと一緒に遊んでいるのを見かける、あのご夫婦の車だ。このままではバッテリーが上がってしまうので、インターホンで教えてあげようと思った。

 

……しかし部屋番号が分からない。駐車場には部屋番号が振られているが、なぜか実際のそれとは一切対応していないのだ。少し考えてみたが、同じアパートの方々との交流が非常に希薄なので、番号について何も情報が出てくることはなかった。

私の住むアパートは3階建て。部屋数はそこまで多くない。私は覚悟を決め、しらみつぶしにインターホンを鳴らしてみることにした。本人に当たらなくても、そのご夫婦の部屋番号を知っている人につながればいいのだ。

 

恐る恐るインターホンを鳴らしていく。しかし不在なのか、夜によく分からない男が訪ねてきたからなのか、皆反応はない。次々と番号を押していき、あれよあれよと収穫ゼロのまま、何と最後の1部屋になってしまった。これは完全に予想外である。

やけくそになりながら最後の1部屋の番号を押す。……やはり反応なし。と思ったら、不意に通話がつながった。つながらないと思い込んでいたので、しどろもどろになってしまった。ぐしゃぐしゃな説明で事情を話すと、その方自身は違ったが、持ち主のご夫妻の連絡先を知っているとのこと。無事お伝えいただけることになった。

 

するとすぐに、上の階からドタドタと人が降りてくる音がした。やはりご在宅でしたか。

正直目的は果たしたので、先に部屋に帰ってしまってもよかったのだが、インターホンを鳴らしてしまっている手前、降りてくるのを待って、白フリードのお父さんにご挨拶をした。

厚く礼を言っていただけたので、なんだかんだ私も徳を積んだいい気分になってしまう。これは数回分の電気の消し忘れを許してもらえる働きのはず。

全くすぐにこんなことを考えてしまうから、消し忘れが一向に改善されないのだろう。

 

ちなみに、私の家はインターホンの映像が録画される仕組みになっている。あの時間、全部屋に要件不明の私の姿が記録されてしまったと思うと、少しぞっとした。

 

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つい先日。またしても気分で、意味なく裏口から回り込んで家に帰る。すると今度は私の車の隣に駐車してある、青いスポーティーな車の室内灯がつけっぱなしになっていた。

まさか2回もこの状況に出くわすとは。

しかし今回は車の持ち主の部屋番号を知っていた。唯一の空き部屋であった、私の上の部屋に引っ越してこられた方なので覚えている。

 

前よりは落ち着いた気持ちでインターホンを鳴らす。なんと今回はすぐに通話がつながった。そして事情を話そうとしたその時。

 

電車が轟音を響かせて通過した。全く私の声が伝わらない状態。声を張り上げるのも嫌なので、電車が通り過ぎるのを待つ。これがあまりにも気まずい時間だった。体感50秒ほど待って、ようやく話をすることができた。よく青スポーティーの彼も待っていてくれたものだ。

そしてインターホン越しに厚く礼をいただく。徳の高い私は満足感に浸りながら、部屋に帰った。

案の定、トイレの明かりは煌々と灯ったままである。