今週のお題「最近おもしろかった本」
昨夜のカレー、明日のパン
ブックオフで購入。370円。すごく面白かった。
若くして夫をなくしてしまった主人公『テツコ』が義理の父『ギフ』と一緒に生活をする物語。辛く悲しいことが起きたあとも日常は続く。不思議な関係性の生活の中で、「暮らし」という尊いものが作り上げられているという感覚に、とてもグッと来るものがあった。やがて夫と息子を失った(ギフは妻も失っている)二人が、周囲の人物と関わりながら、少しづつその死を受け入れていく。そしてその過程で、周囲の人物の救いにも結びついていく。
特に好きなエピソードは、趣味を探すギフがテツコに知り合いの山ガールを紹介してもらう回である。紹介された山ガールを「師匠」と敬いつつも、年甲斐もなく若い女性に良いところを見せたいと張り切るギフが愛らしい。師匠の凛とした佇まいも好きで、私の思い描く理想的な山ガール像だと感じた。
ハラハラする展開や予想外の結末などは何もないが、むしろそれが素晴らしいと言い切れる素敵な本だった。
-----------------------------------------------------------
この文章を書いていて思ったが、山ガールは今も元気でやっているのだろうか。この場合の山ガールとは特定の誰というわけではなく、山ガール全般を指している。この小説が発表されたのが2013年なので、執筆時にはちょうど流行っていた頃なのだろう。しかし現在では、山ガールという言葉自体がもはや死語のような感覚さえある。
その証拠に今この文章をスターバックスで書いているのだが、周りをざっと見回しても山ガールは一人も見当たらない。
……そりゃそうか。ここスタバだから。周りを見渡してしまった私の行動の意味のなさに少し恥ずかしくなった。
山にいてこそ山ガールなのであり、こんな昼過ぎにスタバで休憩しているような女性は、仮にどんなに山ガール然とした恰好をしていても決して山ガールではない。山にはきっと今も山ガールたちが生息しているはずで、ただ単に私の活動範囲と重なっていないだけに違いない。
にもかかわらず、こんな町中で山ガールがいないのかと探す行為は、町中で海ガールはいないかと水着ギャルを探しているのと同義である。
……それはさすがに違うか。
-----------------------------------------------------------
スタバから出た後、寄り道して家に帰ろうとプラプラ歩くことにした。駅前を通りががると、ハイキング終わりと思われる10数名のおばあさんの集団が、円を組み点呼を取っている。皆、目に痛いほど蛍光色のパーカーを羽織っており、これならまず遭難することもないと思われる。
私の思い描く理想的な山ガールとは少し違ったが、早速山ガールと遭遇することができてしまった。この足で市民プールに行けばきっと、水中ウォーキングをする海ガールにも遭遇できるのだろう。