普段あまり行かないのだが、久々に牛丼屋に行った。
まず牛丼を一つ注文。それから汁物も飲みたい気分だったので豚汁も注文した。
あと、私はご飯がびしゃびしゃしているのが好きじゃないので、つゆ少な目とお願いした。
店員さんが「カシコマリマシタ」と厨房にはけていく。
少しの間店内を眺めてぼっとする。
......
......
あれ?
これこのままだと豚汁のつゆを減らされるんじゃない?
注文時、私はこう発声した。
「牛丼と...あと豚汁ください。つゆ少な目で」
この場合、つゆ少な目でという依頼は、直前の豚汁にかかっているように考えられないか?
もちろん豚汁のつゆを減らしたいという人なんて、そうそういるはずがない。
でも絶対いないといえるほど皆無とも思えない。
これだけの大規模チェーン店のことだ。毎日矢継ぎ早に来る、多種多様な客の細かい要望に対応することで、豚汁のつゆを減らすという奇行にも対応できるようにチューンアップされてしまっているのではないか。
いやでも、それはいやだ。せっかく汁物が飲みたいから豚汁を注文したのに、どうしてその汁が減らされなければならないのか。それはもう煮物
「オマタセシマシタ」
とかなんとか考えているうちに私の前にお盆が配膳されてしまった。早い。さすが牛丼屋。オーダーを正す時間さえ与えない。
そんなこんなでやってきた豚汁には、つゆがしっかり入っていた。隣に置かれた伝票には牛丼(つゆぬき)の文字。
私の心配は杞憂に終わった。
早速豚汁を一口飲む。美味しい。これが飲みたかった。
しかし好奇心というのは変なもので、どうしてか俺は続けて汁を飲み干してしまった。
そして、幻に終わった牛丼と煮物のセットを再現して悦に浸った。
という訳で、本当に豚汁のつゆを減らしたい人は、「豚汁のつゆ少な目で」と明確に宣言をしたほうがいい。曖昧だと牛丼のつゆが減らされてしまう。
でもそんな人が実際に現れたら、俺の豚汁のつゆが減らされる可能性が増えそうで困る。