暇のパラメータ

暇なので書いてます。

ラーメン二郎にて

長らく休業状態だった、ラーメン二郎立川店が1月29日にリニューアルオープンした。

何やら営業再開日の正式なアナウンスがない中、近隣のラーメン二郎が臨時休業となっている⇒新装開店の応援に行くということなのでは?という推測の元、深夜からとんでもない行列を作ったらしい。氷点下になる真冬の夜中に、開くともしれない店の前で列をなす生粋の方々には畏怖の念を禁じ得ない。

iine-tachikawa.net

 

私は決して二郎好きではないが、こういう二郎に対する愛を垂れ流す方々に目がない。なので実は暇なときに二郎ブロガーの記事を読んだりしている。そしてその都度、驚異の更新頻度とイカれた情熱に戦慄する。彼らは余裕で週5以上のペースで二郎を食べているのだが、いったいどんな暮らしをしているんだろうか。

以前は豚をあえて月豕さん(旨すぎるときはネ申月豕)と表記したり、うま♡ウンメェ!たらまん~など、独特のハイテンションで溢れる愛を書き連ねるブログが好きだったのだが、最近はあえてトーンを落としたブログが好みである。「麺パツでオーション風味際立つ。スープ非乳化で醤油のキレ強く好み」などと、淡々としたレポートを日々繰り返しているほうが、逆に凄みを感じる。怒りを制御し左腕にため込むことで、冷静さを獲得したモントゥトゥユピーを思い出す。

 

という訳で、今回の件について、様々な方の嬉々としたレポートを読んでいると、さすがに私も行ってみたくなったので、噂の立川店に行ってみることにした。

平日18時過ぎに到着。この段階で行列は15人ほど。最後尾に並び、行列で並ぶ面々をぼんやりと眺めていると、行列に真ん中あたりにSUSURU TVがいることに気が付いた。あの毎日ラーメン健康生活でおなじみのSUSURU TVである。マスクで顔がはっきりとは見えないが、ちょうど先日動画を見ていたので、すぐにピンときた。少しだけおおっと思ったが、そりゃ向こうがあんだけラーメンを食べていれば、ラーメン屋で会うのは別に珍しいことではないと気が付き、すぐに気持ちは落ち着いた。

しかし、行列にはもう一名気になる人物がいたのだ。その方は私の3つ前に並んでいた。年齢はもっさりと蓄えられた白髭で分かりにくいが、50代後半くらいだろうか。髪は薄く長髪で、何より目を引くのは、身長は180cm程度、体重は100kgは余裕で超えるであろうという巨体である。初見で伝わってくる。この方はラーメン二郎の化身だと。

 

行列はあっという間に進み、20分も経たずに入店。店内に4席ほど待機用の椅子があり、そこでカウンターが空くのを待つのみとなった。

先ほどの化身の様子をちらりと眺めると、一之江の○○さん元気にしてる?とか、△△さんの店がホーム(行きつけの店)だけど、今日はこっちに来なきゃと思ってさ~、なんて店主と親しげに会話している。やはり私の予想は間違っておらず、二郎界で顔の知れた存在のようだった。

そして化身の前に運ばれる、すり鉢の様な巨大丼ぶりに堆く積まれた物体。あんなものが本当に食べきれるのかよ。

なんて思っていると席が一気に空いた。もう案内される番だ。……正直緊張してしまった。何せ、化身の横の席も空いているのだ。二郎のカウンターは隣の人との間隔が狭く、あの巨躯の横に座ってしまうと、かなり体をすぼめながらラーメンを食べる羽目になる。何より、猛然と大ラーメンマシマシをむさぼり食らっている人の横で、小ラーメン麺少な目を食べるのは、何だか冷めた気分になってしまう気がした。

 

心配は杞憂に終わり、化身とは離れた席に座ることができた。ちょうど店主がラーメンを作っている真ん前の席だった。私はこういう調理風景を眺めるのが好きなので、いい席に座れてラッキーである。

手際よく6杯のラーメンが一度に作られるのを眺めていると、化身が「ごちそうさん。美味かったよ」と行って席を立った。私はギョッとしてしまった。まだラーメンが出てから5分くらいしか経っていないんじゃないか。もちろん丼ぶりはスープまで完全に空っぽになっていた。

「全然余裕そうですねー」

「いやいや美味いからだよ」

キザっぽい台詞を残し、化身は去っていく。また来てくださいと声をかけながらも、店主は淀みなく手を動かし次々とラーメンを提供する。そして私のもとにもラーメンが置かれた。

 

このロットを捌き終えて、店主は一息付きながらお茶を含んだ。そして呟く。

「……誰だあの人」

 

何てことだろうか!全く化身じゃなかった!

残念に思うと同時に、あのクラスの存在感でも、店主に認知されない二郎界の底知れなさを感じた。

彼は所詮県大会レベルだったのだ。我々が地区大会で見たときは衝撃的に強いと感じても、全国では全く通用していない。そんな学生時代の部活の記憶を追想してしまった。

人に認知されることはこんなにも難しいのだな、そうしみじみ思いながら私は二郎を食べ進めた。

 

 

途中、水を取ってくるのを忘れたことに気がつき、セルフサービスの給水器のもとへ席を立った。そういえばと思い出し、店内をぐるりと眺める。するとカウンターの対岸、一番端の席にてまさにラーメンをすすっているSUSURU TVを発見した。

 

改めて見たら全く別人だった。というか全然似てもいなかった。

人を認知することも、なかなか難しい。

 

最後にラーメンの味については、以下のとおり。

「麺ややデロだがしなやかで美味。スープ微乳化でマイルドな塩味。アブラマシがシャキ野菜との相性抜群」